発声音には時折地声の高い人がいます。
何等巧まずに高音を普通の状態でい発声して、聞く側の人が驚くような場面を見受けることがあります。
これは例外であって、まずほとんどの喉摘者は音が低い。
車中等は勿論のこと広い場所や大勢の人混みの中では、低音のため話がよく聞きとれないのが普通であります。
このため折角覚えた食道発声に自信を失い、とても駄目だと独り決めをしてこのような場所に出ることを避けるか、出ても話の場から遠ざかる人が多いのです。
そこでこの低い音をどうすれば高くすることが出きるかということについて考えてみたところ、次の3つの方法を練習に取り入れて、高音発声の解決に資していただければと考えて提案したいと思います。
第一は、常に高音発声の練習を意識して随時繰り返し練習することであります。
一般的には食道に十分空気を呑み発声の際お腹にしっかり力を入れ腹圧を使って喉の
奥の方から鼻に抜くようにして発声すると自分でも驚くような大きな芦が出ることは間違いありません、
この状態を日常繰り返し行うことが有効ですが、さらに例えば二階にいる家族を階下から大声で何回も呼んでみたり、または遠くにいる人を声が届くまで呼び掛けたり、あるいは車中等の騒音の中であえて会話をするなどして、極力練習の機会を自ら求めて稽古を続けることは、高音化こつながるよい手段であります。
要は日常生活の中に高音発声をする機会をつくって練習代りにすることです。
第二は、下咽頭の発声部位、即ち発声のとき外部から指を当ててみると僅かに振動しているところがあります。
この部分から上方の附近に発声の際空気をぶち当てるような気持で強く発声すると高音につながります。
これまで気づかずになんとなく発声していた時に比べて、このようにすると一段と高音が出ることに気がつきます。
また発声の際は出来るだけ発声部位を上方にするよう、たびたび述べていますが、その上方にする部分とはこのことを言っているのであります。
健康体であった時は話をしようとすると、空気が声帯を振動させて声が自然に出るので、あとは口の型を変えるだけでいろいろな声に変って話が出来ていました。
ひるがえって、現在の私たちは声帯を切除して無いのにかかわらず、発声が出来るということは声帯に代るなにかの発声機能があることは理解出来ますが、その場所はどこかというと食道入口部のくびれ(隣邦)のところであります。
この発声機能のある部位とその上方附近に食道内の空気を強く押し当てる気持で発声すると一段と高音がでるいうこと重ねて申し上げておきますので是非実行していた
だきたいのです。
これは効果100%で高音発声にはよい方法であることで自信がもてます。
尚子の方法がよく出来ているかどうかの証拠は発声の都度空気がまともに当たるので、この要領で何回も発声練習するとこの部分がなんとなくカワキが感じられてくるので自分でもよくわかります。
第三は、連続会話の際、言葉姦当に区切って空気を十分に蓄えてから次の言葉に移る習慣を付けることであります。
食道発声がだんだん上達して一息で長く喋れるようになることは、それなりに進歩した証拠でありますが、そうかといって一息でそんな長く話が続かないことも事実であります。
そこで高音の状態でつづけて話をするにはどうしたらよいかの問題を考える必要があります。
まず私たちの食道発声の基本になる空気量について考えますと、健康体の大人の肺活量3,000〜3,500ccと聞いでいますが、それに比べ私たちの食道発声に使う食道内の空気量は120〜150ccと言われています。
このように両者が会話に使う空気量は絶対的なびらきがあります。
言い換えれば、健康の人の約20分の1の空気量で喉摘者は話をするわけですから、、健常者と普通に話をするためにはそれなりの工夫が必要であるということです。
そこで健康体の人が一気に話をするのに対し、私たちは何回も僅かな空気を補充しながら話を続けることが必要で一気に長く喋らないことが高音化につながるということが理解できます。
この基本的な問題をよく理解して会話はできるだけ短く区切って、空気の補充をしながら力のある声で明瞭に話をすることが必要です。
それならばどのくらいの語数に区切って話をするのがよいかというと、人によって差がありますが、一般的に語尾まで完全に喋るには5〜7語程度がよいと思います。
そして接続詞のところで、確実に空気を呑んで充電することがポイントであります。
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以上の3点をよく検討理解して、高音発声を目指して怠りなく練習をしていますと、何時となく高音に転化して、必要に応じて何時でも高音が出るようになります。
大切なことは、このことが習い性となることで、思いつきのその場限りの練習では好結果は得られません。
なお、練習に当っては健康でつねによいコンディションであることが基本ですから、病気は勿論、寝不足、疲労等があっては問題になりません。
これまでの練習によって得た発声法に、さらに錦上華を添えること、それは高音発声をすることであり、その力を貯えることは私たちの発声欠陥克服の1つが達せられたということになるのです
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