口腔内原音発生振動子を用いた無喉頭者の音声発生システムの開発
(東京大学工学部:「H.T」「M.N」「T.O」「Y.H」歯科医院:「Y.K」
東京大学耳鼻咽喉科「K.K」)
<音声言語学1999vol-40,no-1より>
- はじめに
喉頭摘出後使用する人工喉頭には,自然な発声が可能であること,発声時に両手を拘束されないことが望ましい。
これらの要求を満たすため,口腔内原音発生振動子を用いた音声発生システムを構築した。
- 口腔内原音発生振動子を用いた発声システム
喉頭摘出後,患者は喉頭原音を生成できないため,発声できなくなる。
しかし,共鳴・構音器官は術後も残存するため,喉頭原音の代用となる音(以後,代用原音と呼ぶ)を共鳴腔で人工的に生成すれば,それを用いた発声は可能となるはずである。
また,音声の抑揚(エネルギ)と音程(ピッチ)に関する発声者の意志を抽出し,代用原音をそれらの情報により修飾すれば自然な発声も可能である。
著者らは,代用原音を生成する機構として,振動子を義歯に埋め込んだ口腔内原音発
生振動子を考案し,試作した。
赤外線を用いて振動子を無線制御することで,器具を保持せずに発声することも可能である。
- 発声実験の結果とその検討
試作した口腔内原音発生振動子を用いて喉頭摘出者に発声してもらう実験を行った。
その結果,電気人工喉頭と同程度の明瞭な音声を生成できることがわかった。
た,あらかじめ用意したエネルギとピッチの情報で修飾した代用原音を用いて行った発声でほ,より自然な音声を生成できることを確認した。
この方法では,簡単な歌を歌うことができた.これらの発声実験で,本システムの代用音声としての有効性を示した。
なお,本システムは放射線治療で頸部皮膚が硬くなり電気人工喉頭を利用できない患者には,特に有効であると考える。
- 結論と課題
ロ腔内原音発生振動子を用いて,喉頭摘出者の音声を生成することに成功した。
代用原音をエネルギとピッチの情報で修飾することで,自然な発声が可能であることを確認した。
今後は発声者のエネルギとピッチに関する情報を抽出するセンサを開発し,本システムに組み込むことが課題である.