看護士(婦)
発声機能の喪失・看護婦の役割
(慶応病院耳鼻咽喉科病棟婦長:T.K)<音声言語学1999vol-40,no-1より>
はじめに:喉頭全摘術は音声言語機能を喪失することによるボディイメージの変容,日常生活機能の低下,生活行動の縮小,社会的役割の喪失などが問題となる。
このことを最小限にするためには,できるだけ早く失われた音声を取り戻すための援助が必要となる。
術前,術後看護の要点について述べる。
術前
患者・家族が病状・手術方法を正しく理解し,受容できるよう援助する。
術後のイメージを理解しやすくするために,当病棟作製のVTRを視聴した後,質問を受ける。
また,発声教室への訪問,社会復帰されている喉摘者に直接体験談を聞けるような環境を作る。
術後は言語的コミュニケーションができなくなるため,非言語的コミュニケーションの方法を実際に練習しておく。
また,失声に対する社会的恩典について,紹介する.
術後
社会復帰に向けて板極的にリハビリテーションに臨むことができるような援助が必要となる。
まず,術前から練習していた筆談によるコミュニケーションの手段を用いて,税極的に対話できるように援助することが基本となる。
銀鈴会作製・当病棟作製のVTRを視聴,.喉摘後の発声の原理について学習する。
身体的な退院後のケアについて永久気管孔の管理,入浴・食事・日常生活についてVTR学習後,質問を受け,説明する.食道発声の開始時期は術後の経過によって異なる。
最初の発声は3〜6ヵ月間かかり,この方法の習得は必ずしも容易ではないが,上達すると健常時に近い発声が可能であることを説明し,理解を得ているが,退院後のアンケート調査結果では,全員話すことの難しさを訴えている。
今後の課題
音声リハビリテーションは,銀鈴会に依存しているが,退院後の問題点を知り,これからの看護にフィードバックできるようなシステムが必要である。
たとえば,患者,家族が自由に学習できる施設.(米国では病院内に設置されている).また,食道発声ができるまでのコミュニケーションの手段として,電気喉頭の使用の是非.電気的な通話機(翻訳機のような)の開発などが望まれる.