北鈴会の皆様へ
(旭川医科大学付属病院看護婦:K.Oさん:北の鈴15号)
毎年「北の鈴」が病棟に屈くと、みんなで一緒に読み合います。
元気に活躍されている様子をみていると、患者さんやそのご家族の皆さんの入院中の姿が、ついこの間かのように浮かんできます。
つらい冶療にもじっと耐えていたあの人、退院が決まり喜びの涙を見せたあの人…。
日々の努力や活躍の姿で、ほっと安心する一方、入院のときにはかけらも見せなかったその時の衝撃や不安感が記され、あらためてその心の問題の大きさ・重さを思い知らされます。
最初、北鈴会の存在を知って思ったことは、「世の中にはこんなに喉頭摘出をうけた患者さんがいるんだなあ」ということ。
あれから五年経ち、たくさんの人たちと出会い「その人らしい生き方」を一緒に考え、大切な時間をともに過ごさせて頂きました。
そのたびに思うことは「患者さんは強くたくましい」ということです。つらく大きな手術や治療を乗り越え、声が出ないというハンディキャップを抱えながら、これから生活してゆこうとする人は、自然とたくましくなってゆくのでしょうか。それとも、人自身のもちうる力なのでしょうか。
わたしたちが患者さんやそのご家族と関わるときは、先にも書いたように、その人が「その人らしく」生きるためともに考えているつもりです。
しかし、本当にその人のためになっているか、はっきりいって自信はありません。反対に励まされたり、叱咤されたりするときもありました。
人生の大先輩である皆さんにとって、まだまだわたしは「ひよっこ」なのでしょうか、感心するだけになることもしばしばです。
最近、機会があり習ったことばで、その人自身のなかで何かが変わり、またそれによって周囲も良い方向へどんどん変化する、その力を"サムシング・グレイト"という
そうです。
日本語で直訳すれば偉大な何か(の力)というのでしようか。
北鈴会は、患者さんやご家族だけでなく、病棟で看護するわたしたちにとっても心強い支えですが、何よりも同じ状況を経験された患者さんにとって、そのサムシング・グレイトのきっかけでありうるように思います。
看護婦は、残念ながらその瞬間の関わりしか出来ません。
しかし、北鈴会という存在は、患者さんにとってその人生の単位で関わっておられているように感じます。会の方々の日頃の努カにただ感謝するばかりです。
人生最大の試練を乗り越え勝ち得た命ですから前向きに一日でも早く、心の社会復帰をなし得てほしい、そう思います。
そのためにわたしたちも出来る限りの看護を続け
てゆきたいと思っています。
先の講習のなかで「一期一会」ということばも教わりました。
茶道のことばで一生のうちでこの機会はこの時だけだから、この瞬間を大切にしよう、という意味です。
看護婦になり、最近になってこのことばの意味がやっと実感できるようになりました。これからもさまざまな人生経験を重ね、人間的にも深みを増し、本当の意味で患者さんやご家族とともに歩んでいけるよう頑張りたいと思います。
最後になりますが、皆様のご健康と、さらなるご活躍を心よりお析り申し上げます。