北鈴会30周年によせて
(札幌斗南病院耳鼻科病棟:E.Wさん:北の鈴11号)

 北鈴会の創立三十周年を、心からお喜び申し上げます。
三十年もの長きに渡り地道に中断されることなく、脈々と引き継がれて、四百人近い多くの人力に、和らぎと勇気を与え続けてきたご努力に驚嘆を覚えます。

 私は、昭和五十八年から喉頭摘出をしなければならない患者さんと係わりを持つようになりました。
その頃の私は知識不足で、本に書かれている以外全く解らず、こうした患者さんを前にしてとっても不安でした。
声を失うことへの不安を、どのように受け止め、励まして行ったらよいのか、解らなかったのです。
こんな時、新任の先生から北鈴会のことを伺い、連絡をとりましたところ、早速、Oさんが病棟を訪れてくれたのです。

 その日のことを、今でも鮮明に思い浮かべることができます。
やや低い声ですが普通に話している!。手術して二十年余経過していることや人工喉頭(タピア、ネオポックス等)、食道発声等々について、手術を受け入れないでいる患者さんに実に解りやすく、ご自分の体験に基づいて説明してくれるのです。
何と温かい、説得力のある言葉であったか、患者さんも私も感動を覚えたものです。勿論、その患者さんはすぐに手術を決断してくれました。

 あれから十数年たちましたが、今でも手術する患者さんがいると、北鈴会の会員の方々にお願いして助けて頂いております。
わざわざ昼休みに病室までかけっけていただいたこともありました。

 『手術後、会話についてどうなるか』、やはり医師やナースの説明だけでは納得できないでいる患者さんも、具体的で、親身に満ちた説明で安心して手術を受入れ、励まされ、勇気づけられるのです。
このようなことから、患者さんには、入院中に一度は発声教室の見学に行くよう勧めております。
また、退院後も体調を整え休むことたく、「第二の声」の習得を目標に努力していただくよう、励ましているところです。

 最近の医学は日々著しい進歩発展し、きびしい状況での手術が行われるようにたっています。
即ち、舌根.咽頭・食道まで及ぶため、場合によっては食道発声は勿論、人工喉頭も使用できたい患者さんも発生しています。

 北鈴会の方々には、喉摘出者の先輩として、発声訓練が出来ない患者さんにも筆談によるコミニケーション(将来的にはコンピューターを利用した便利な機械ができれぱいいなあ!)のとり方や、生活面でのアドバイス等、こうした人々の心の支えとなって頂きたいと願っております。

 大変むずかしく、大きな期待を北鈴会の方々にお願いしてしまいました。
私も、微力ですが臨床の場で、こうした患者さんとともに悩み、教えられながら、より充実した看護に努力して参りたいと考えておりますので、どうぞ今まで以上のご教示をお願い申し上げます。

 最後になりましたが、会員皆様のご多幸と、北鈴会のご発展を祈り、日頃のご尽力に感謝しつつペソを置きます。