顧問回答;
痰の吸引の問題です。毎年同じ質問があるので苦労されている方が多いのだと思います。
さきほどにもお話しましたが、吸引チューブを奥まで入れて奥の痰をとれば楽になるという考えは間違っています。
ひどい肺炎の時には内視鏡を入れて痰をとって肺を広げる処置も考慮しますが、それはひどい肺炎の時の医学的処置であって、
日常の痰の吸引でチューブを奥まで入れて痰を取れば改善することはありません。 痰というのは普通の排痰能力があれば気管孔周囲まで出てきますから、
それをちょっと吸ってあげるだけでとれます。
その時にもチューブの先端を気管にくっつけないようにしてください。
毎日痰に血が混じるというのは、気管が傷つき出血するという悪い状態です。
人間の体は炎症状態を作って傷を治そうとします。
白血球とかリンパ球、血小板などが傷の周囲に集まってきて修復します。
したがって傷は炎症反応を強くする原因になります。
炎症反応が局所だけにとどまらないほど進行すると、身体全体にリンパ球や白血球が炎症を作り出し重症化するという悪循環をもたらします。
皮膚を傷つけるとかさぶたができます。傷を治そうとするかさぶたを無理に取るとその中の生傷が露出し、
またかさぶたを作って傷を治す作業を一からやり直さなければならなくなります。 一生懸命かさぶた造って傷を治そうとしているのですから、
かさぶたをとらないようにすることが大事です。
最近は消毒に対する考え方も変化してきました。 以前は手術後に毎日傷口を消毒していましたが、傷口を治す白血球、
リンパ球などの細胞を消毒薬が傷害することが問題になり、最近は傷口にシールを貼って、消毒せず一週間くらい傷をそのままにしておくようになりました。
人間が治そうとする作業を、無理にいじって邪魔をしないという発想に変化してきました。
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