逆流する現象

下咽頭癌にて、空腸再建ですが、小腸移植の手術を受けて、二年半が経過しておりますが、 当初は食べ物の通りが悪く、これは食道と小腸の繋ぎの部分が委縮して通りが悪くなっており 三回の内視鏡、風船による拡張で、現在はスムーズに食事しています。 質問は、二年半経っても、食べたり、飲んだりしたものが屈み込むと逆流する現象が未だに継続 しているのですが、これは小腸の移植の場合は永久に続くものでしょうか? また、横になって、唾液を飲み込むと、素直に食道を通過して胃の方に行ってくれません。 これもそのうちに治るものでしょうか?
次に、小腸は自律神経で蠕動運動しており、食物等がくると押し出す方向に動くと聞いておりま すが、トカゲの尻尾の様に、食道に移植した小腸 も本体と連動して、蠕動運動をしているのでしょ うか?手術当初はトイレで力んでは排出しようとすると、喉元に逆流したりして、蠕動運動は小腸 の方向が逆についているとその方向に活動するのでは、と思ったりしておりましたが、同じ臓器は 体内にては連動するものでしょうか?食道発声にたいしては、この小腸の作用は特にあ るのか、ないのか、しっかりと鍛えることが必要でしょうか? 二年半経って、いまはどうやら声が出やすいように感じておりますが。

(平成23年:神奈川銀鈴会会報38号)

最近の手術は単純咽頭摘出や顎部リンパ筋摘出の同時は、特に珍しい手術ではなく、頭顎部と胃腸・ 肛門までの腹部の外科が一緒になって、患者さんの体力があれば一度の手術で多種臓器を触ることもあ るようです。ここ数年の入会する会員の高齢化と減少化、そして抗ガン剤を使用している方が多くみられます。 空腸等を移植した場合、時間の経過とともに逆流することも少なくなってきますが、全く無くなるこ とは少ないと考えます。 食道に移植した小腸は本体と連動することはありませんが、神経・血管も移植しますので、蠕動運動、 逆蠕動運動もおきる可能性はあります。逆流等を防ぐには、食事をしたら直ぐに横になら ないこと、食べて直ぐに寝ないようにすること、枕を高くして寝るというようなことを注意したら大分 違ってくると思います。小腸移植は食道発声に直接関係ないが、空気の取入れには、充分に気をつけて下さい。

(専門医)