入会 R3-8 70歳 喉頭(甲状腺転移) 抗がん剤(レンビナ)治療が始まって28週になりました。 味覚障害も強くなりましたが色々試して、工夫の日々です。 時々襲ってくる副作用、特に腹痛下痢、手足症候群(手足の指先が赤くなり皮が向けて痛くなる) 体重も10s減少しましたが治療継続頑張ります。 副作用の軽減法等宜しくお願いします。 (令和4年:神奈川銀鈴会会報49号)
(令和4年:神奈川銀鈴会会報49号)
回答 抗がん剤はがん細胞の増殖を抑える作用があります。 増殖の早い正常組織は抗がん剤の影響が大きくなります。 新陳代謝が早い粘膜組織は抗がん剤の副作用が強くなります。 粘膜の再生が追いつかなくなると口内炎ができます。 また舌の味蕾(みらい)が傷つくと味覚障害の原因となります。 その他に野菜、果物の摂取量の減少も亜鉛の低下をまねき、味覚障害の原因となります。 粘膜損傷は口腔咽頭では、咽頭痛、嚥下時痛、出血を、大腸であれば下痢、血便、水分、電解質の損失と栄養の吸収障害をもたらします。対策としては口内炎には水分で口腔内を潤すことのほかに、唾液の排出を促す食材の摂取、薬剤の内服、口腔内の乾燥を防ぐ人工唾液の塗布などがあります。痛みが強い場合は鎮痛剤の内服、鎮痛剤を含むうがい液で症状を緩和してください。 下痢時には電解質を含むOS-1の様なスポーツドリンクで水分補給し、ビタミン欠乏症には総合ビタミン剤の内服をお勧めします。できるだけ早期に止痢剤(ロペラミド)を内服することで 脱水、電解質の喪失を食い止めることが重要です。 ただしここで注意が必要なのは、最近使用される機会が多くなった免疫賦活剤(免疫チェックポイント阻害剤)は、従来の抗がん剤では得られなかった効果を示しますが、副作用も異なります。 免疫賦活剤が誘発した過剰な免疫活性はがん組織を攻撃しますが、正常組織も攻撃します。 過剰な免疫活性による正常組織の損傷が命にかかわる場合があります。 したがって免疫賦活剤で引き起こされる臓器障害が重篤になる前に免疫抑制剤であるステロイドの治療を開始する必要があります。過剰な免疫反応がもたらす腸炎の下痢の程度は、ステロイド治療を開始する重要な目安となります。 無理に止痢剤で下痢を止めると、免疫の過剰反応に気づくのが遅れ、ステロイド治療の開始を遅らせ、免疫の過剰反応が重症化する危険があります。止痢剤の開始時期は抗がん剤の種類によって異なります。 主治医の指示をあおいでください。 皮膚炎の痛みはものをつかむのも辛くなる場合があります。対処法としては皮膚の乾燥を防ぐことが大切です。保湿剤(ワセリンなど)で皮膚の表面を保護することが重要となります。 通常の保湿剤では不十分な場合はテープで皮膚を保護することもお勧めします。 各施設には治療による皮膚の損傷を管理するチームがありますのでご相談ください。
(専門医)
食道発声法/ 神奈川銀鈴会