- 原音とは?
サイダーやラムネなどを飲み下すと、しきりに「ゲップ」がでます。つまり胃内にてガスが発生して、これの逆流がゲップです。
食道発声では、食道内に自分の力で空気を入れ、この空気を逆流させることによって原音を出すので、ふつうのゲップとは少々勝手が違います。
原音とは、食道内の空気を振動させて、口から出す音でゲーという音がする。次に口、鼻等の器官を使って、この原音をいろいろな音に加工するわけです。
だから鼻が詰まっている人の音が明瞭でないのは、その構音運動にあります。ゲップは自分の意志で出すことは出来ませんが、原音はコントロールできます。
私がこの原音を出すのに成功したのは、 食道発声法のp102の図を参考にしました。
(術後1年4カ月目)
その人の手術状態によって修得する期間は異なります。早い人で1日で、遅い人では1年くらいかかります。
(術後1年5カ月目)
原音は、ゲーという音で綺麗な音ではありませんが練習をすることによって明瞭度の高い音になりますので安心して下さい。それよりもこの原音を自由自在に出せるようになれば食道発声は80%成功したと同じです。それほど大切なものです。
原音の出る仕組み
原音を出すためには、術前と術後の体の変化を知っておかなければなりません。私どもは喉頭摘出手術によって声帯を失いました。
今までは声帯を振動させて、原音を出し、構音器官(鼻、口)によって、その原音をいろいろな音色に変えていったわけです。
声帯を震わして原音を出すわけですが、その震わすのに必要な空気は肺に貯蔵されています。
ところが術後にもこの空気の貯蔵する肺はありますが、この肺から出る空気が使えません。
首の前にある気管孔を通じて空気が出たり入ったりしているため口とか鼻を通らないのです。(だから、臭いは判別できません)
それによって良い点もあります。食事の道と呼吸の道が別々なので餅などつまらせて窒息死ということはありません。
いくらつっかえても空気を吸う場所は確保できています。
では、その空気をためる場所はどこかというとそれは食道です。術前の肺活量は3000ccぐらいあったのが術後は150ccぐらいになります。また、声帯の代わりに、
食道入り口部の粘膜を使います。大切なのは空気の流れです。この力で食道入り口部を振動させ、音(原音という)を造るのですから。
まず、空気を食道にのみ込みます。そして、食道に入った空気をすぐ吐き出します。
このとき、すぐ吐き出さないとその空気が胃の中に入ってしまいます。胃の中に入ってしまった空気は制御できません。
胃が空気でいっぱいになるとその空気は「ゲップ」として口から出るかまたは「おなら」として放出されます。まとめますと術前と術後の発声の違いは次のようになります。
<>術前( )内は術後です。
- 空気を吸う <鼻、口>:(気管孔)
- 空気を溜める<肺>:(食道)
- 空気を吐き出す<肺からの空気を出す>:(食道内の空気を逆流させる)
- 原音を出す<声帯>(食道入り口部)
- いろいろな音を造る<構音器官>(構音器官)
原音の出し方(呑み込み法)
食道発声法では、原音の出し方は大きく分けて、呑み込み法と、吸引法があります。喉摘者は原音を1日でも早く出すことに成功をしなければなりません。この原音を出すことによってその後の発声練習に熱の入り方が違ってくるわけです。また、原音を出すことで失っていた声がよみがえらせるという精神的にも力になります。
原音を出す手順
リラックスした姿勢を保ちます
そのときの首筋は伸ばし。手は膝の上に軽くおく
お茶を飲む
お茶と一緒に空気が入っていきます。
食道に吐いた瞬間にすぐ吐き出す。
お茶は胃の中に入っていき、空気だけが出る。その空気が食道入り口をふるわせます。
原音が出る。
以上
何回も何回も繰り返します。最初は何とかして原音を出そうと思って身体に力がはいります。
そして首を振ったり、身体がゆがんだりしがちです。無理もないことですが、できるだけリラックスの姿勢を持つことに心がけて下さい。
そして原音「ゲッ」が出たら、何百回、何千回と訓練して、固くなっている食道入り口部を原音の出やすくなるまで練習します。
必要なとき原音が確実に出せるようになったら吸引法に切り替えます。
また、お茶ばかり飲んで練習をしているとお腹がいっぱいになるので、なれてきたらお茶なしで空気の固まりを呑み込んで練習します。
その手順は、
リラックスした姿勢を保ちます。
力が入っていたり、構えていたりしてはいけません
口を大きく開ける。
口の中に空気が入ります。別に口を大きく開けなくとも鼻から空気が入りますが、今後のことを考えて口をあける動作をして下さい
口を閉じる。
口の中に空気は入っています。だからほっぺたが膨らんだ状態です。
顎を引く感じで、空気を飲みます。
最初は、鼻から空気が逃げるかもしれません。でも少量の空気でいいですから、のみ込むます。もし出来なければ、鼻をつまむといいかも知れません。そのときはほっぺたを膨らます程の空気は必要ないです。そんなに大量の空気はのみ込めません。
顎を出す感じで空気を出します。
このときのタイミングが重要です。これがわかると成功します。
原音が出る。
「ゲッ」音とが出ます。
その後の練習
原音は「ゲッ」という音で自慢できる音ではありません。でもこれがこれからの自分の声となります。何らかの病気が伴って食道発声が出来ない人もいます。その様な人から比べれば、恵まれています。自分で造った声なのですからその原音に感謝をしよう。
また、この原音が構音器官を通ると人によって別々の音となります。すなわち誰の声であるか区別が付くというわけです。人によって口、鼻の構造が違うためにそのようなことが起こります。
この、原音が自由自在に出せるようになったら、すぐ吸引法に切り替えて下さい。1日でも早いほうがいいです。