食道発声装置

食道発声用補助装置の完成近づく!!

 平成9年2月14日の日喉連の役員会でN会長より、「食道発声用発声補助装置」が来年(平成10年)3月に完成すると発表があった。これは、平成3年頃より研究、開発の構想を進められたものです。
平成5年9月22日付の日経新聞に「喉頭がん患者の声、形態装置開発へ、通産省工業技術院」と大きな記事が掲載されました。
そして平成7年2月に通産省補正予算で「発声補助装置の開発研究費」として総額6億円が決定されました。来年(平成10年)3月に完成品となる。
 補声器は食道発声特有の低い声を健常者並の声に修正する発声補助装置です。
食道発声が出来ないと優秀な補声器ができても猫に小判です。がんばろう。




補助装置開発のその後の経過(1998/10/01記)


 昨年度に「銀鈴」誌44号でもご報告したとおり、食道発声補助装置の開発が、通産省工業技術院の指導のもとに進められています。
実際の機器の制作面については松下電器、テアック、アシダ電気の3社が担当しており、これに対する技術的あるいは実際の使用面についての助言をするために委員会が設置されていることは昨年もご説明したところであります。
 この機会は本体とマイクロフォンの2つからなっており、本体は基本的にアンプ、スピーカ、電池を含んでいます。さらにあとからも述べるように音質を変化させるための、いわゆるディジタル処理部分を内蔵するタイプも試作中です。
これらの機械を製作する際の基本的要件はいかに能率的に声を大きくするか、にあるわけですが当初からいろいろと制約があるのが事実です。たとえば機械とくにスピーカを大型にすれば音も良くなり増幅力の増すことになりますが、これでは携帯装置としての意味がなくなります。
またマイクロフォンも同じ様な理由で大きさに制限があります。さらにデジタル処理を含めた場合の価格の問題も無視出来ません。昨年の内にまず本来の目的である、声を大きくすることだけを目指した試作機が出来上がり、銀鈴会会員による試用が行われました。
実際には指導員16名、声友クラブ会員31名、上級クラス会員34名の計81名の方に試用を依頼してアンケートによって感想を求めたわけです。その結果は1口でいうとかなり意見が分かれており、満足度だけを取り上げてみても満足31名、概ね良16名、不満34となりました。
不満な主なものとしては、まず本体(アンプ、スピーカ部分)について、さらに小型化、薄型化を望む(24)音の割れ問題(21)、ハウリングがある(12)、音量不足(10)などがあり、マイクロフォンにつきましてはワイヤレスを望む(21)、襟に付けたい(15)などがあげられました。
これらの意見を参考にしてその後も改良が進められていますが、たとえばワイヤレスマイクはすでに設置可能となっています。小型化のどの点については音質の改善と裏表の悩みがあり、小さくすれば音は悪くなる怖れがあるので限界があるでしょう。
襟にマイクをつけることについては、テストしてみると気管孔からの雑音が強調されて好ましくありません。

 今年の1月のニュー・イヤー・ボイス・コンテストの際、女性会員「鈴蘭の会」会員のコーラスで、最近の試作機のテストをかねて全員が補助装置を使ってみました。この装置では改良型のマイクロフォンを用い、さらにマイクにスイッチがついているためハウリングが全く起こらず、拡声効果もかなり認められました。
この場合はワイヤレスではありませんでしたが、ワイヤレスでも同様の効果が期待できると考えています。
 さらにその後、今度は音質改善のためのディジタル回路を組み込んだ試作機のテストが行われました。この機械では、まず使用者の話し声を一旦録音してその性質を分析し、その結果に基づいて回路の動き型を決めるのです。
またコンピュータをそのまま使うテストで小型の装置に組み込んだ完成品の形にはなっていませんでしたが、評価結果としては声のかすれの改善を含めて、まずまずの成績でした。

 このような次第で、少しづつ開発は進展しています。先に述べたアンケートの結果でも全く反対向きの希望(たとえばマイクを小型化にという人と、もっと大型にという人が同数くらいいるとか)がみられることもあり、すべての方に満足を与えることは困難な上に、はじめにあげたような限界の中での開発ですので、どこまで会員の期待に応えられるか問題はありますが、委員会としては鋭意努力を続けていくつもりでいます。
 なお、以前からこの装置は食道発声を上手にするものではない、といってきました。つまりこの装置は、ある程度話のできるレベルの人を対象にしたものということです。
しかし考えてみると、もし初心のレベルでもこの装置を使うことによってあまりよけいな力を入れなくとも声が出ることを会得できれば、その後の練習にそれなりの効果が期待できるわけで、そういう利用法があるのではないかと最近は考えています。
 まだこれからも試作品のテストなどの点でご協力を頂くことがあると思われますので、その節はよろしくお願いいたします。
<平成10年:「銀鈴」第45号より>