食道発声の仕組み

食道発声とは、空気を口から吸い込み、食道の中頃で止める。
瞬時にその空気を逆流させて、食道の入り口部を振動させます。
そしてその振動音を構音器官でいろいろな音に
変換させることです。

食道発声の仕組み

人間が言葉を話せるのは、発声器官があるからです。その器官とは、

  • 呼吸器官(気管、気管支、肺)

  • 発声器官(喉頭)

  • 構音器官(鼻腔、咽頭、口腔)

であり、これら3つがお互いに連携を保って音声が出来ます。
 喉頭には、声帯といって、呼吸しているときには左右に開いて空気が楽にここを出入りします。ここを声門と名付けられています。

 まず空気を口や鼻から吸い込むと、声門が開いて肺に入ります。次に声を出そうとすると声帯が左右から寄ってきて中央で閉じ、声門が封鎖されます。
ここに空気が通ると声帯が振動します。このときの音は、「ブー」という音です。
これが喉頭の原音でありこの音が構音器官などを通って共鳴をおこし、さらに微妙に組合わさって複雑な音色になります。

 喉頭摘出してしまいますと気管が切断されので、口の方との連絡がなくなってしまいます。そして、前頸部(首の下のほう)が気管孔(7KB)となります。
その結果、肺は永久に発声と無関係になってしまいます。

 しかし、喉頭を失っても構音器官が健在ですから、空気の貯蔵庫があれば原音がだせます。その空気の貯蔵所として考えられたのが食道です。
つまり、空気を食道の中に一時的に蓄えるておくわけです。
(健常者は空気の貯蔵庫(肺)に3000〜5000cc入るが、術後者の場合は空気の貯蔵庫(食道)に150cc前後しか入りません

 次に声帯の代用となるものには、食道入り口部が最適と考えられています。
 食道発声法とは空気を気圧の差によって食道の中に入れ、それを逆流させ食道入り口部で原音を発声させ、それを構音器官でいろいろな音にするということです。(この方法を吸引法といいます)

 人工喉頭にかわって何故、食道発声が多くなったかといいますと、この発声法はいついかなる時でもすぐ話が出来るなどいろいろな面での利点がおおく、しかも指導が適切に行われるようになったからだと思います。


 発声のリズムは喉頭を用いる発声と同じです。少しも違和感はありません。上達すれば、風邪をひいたぐらいにしか感じません。

ここ(235KB)に、術後12年〜13年経過したF指導員よる食道発声法による声を録音しております。


食道発声練習を始めるには

  • 1.必ず自分もいつかはできるという固い信念を持つこと。

  • 2.個人差があるので、焦らないでマイペースの訓練が必要です。

  • 3.計画を立てて着実に実行する事が大切です。

  • 4.上手な人との交流を持ち、刺激を受けることです。

    (術後1年3カ月目) 最初のうちは言葉を一つ一つ覚えていくのが楽しいものです。




  • 食道の長さと太さ

    食道の長さは、日本人の平均で25センチくらい。右回りと左回りの2層の筋肉で出来ている。大きく伸び縮みして、1回に200ミリリットルくらいの空気を入れて戻すことが出来る。では、食道の太さはどのくらいでしょうか。広がればかなりの太さになります。鶏卵がそのまま通るくらいの太さになります。なにも入っていないときの太さはその人の親指くらいです。(銀鈴45号:こぼれ話から)


    人間の身体とは不思議なもので、訓練で食道の運動を制御できるわけです。

    人間に与えられていない機能を訓練によって獲得することはすばらしいものです